過去の名君は仮初の王に暴かれる
その夜 ※
少し欠けた月が天頂付近にさしかかったころ、控えめに王妃の部屋のドアがノックされた。いつもより丁寧に湯浴みした後、自室で本を読んでいたエルゼは、パッと顔をあげる。
「ど、どうぞ、お入りになって……」
緊張のあまりか細くなってしまった声で返事をすると、大柄な人物が部屋の中に入ってきた。くつろいだ格好のロレシオだ。湯浴みしたばかりらしく、髪が少し濡れている。
「すまない、約束をしていたのに遅くなってしまって。夕食のあと、執事に捕まってしまってな」
「本を読んでいましたから、お気になさらず」
「邪魔したようだな。本を読み終えるまで待つから、ゆっくり読んでくれ」
壁にもたれかかって腕を組もうとしたロレシオに、エルゼははにかむように微笑んでみせた。
「い、いえ、緊張して本の内容が全然頭に入ってこなくて……。今日はおしまいにします」
静かな部屋に、パタン、と本を閉じる音が響く。
ランプの灯に照らされたエルゼの白い頬は、心なしかほんのり上気している。ロレシオの心臓が大きく跳ねた。
「嬉しいことを、言ってくれる」
ボソリと呟くと、ロレシオは大股で部屋を横切り、椅子に座っていたエルゼを軽々と抱え、ベッドの上にあおむけに寝かせる。エルゼのガウンの裾がめくれあがった。机の上にあるか細いランプの灯が、ほっそりとした白い足を浮かび上がらせる。
「ど、どうぞ、お入りになって……」
緊張のあまりか細くなってしまった声で返事をすると、大柄な人物が部屋の中に入ってきた。くつろいだ格好のロレシオだ。湯浴みしたばかりらしく、髪が少し濡れている。
「すまない、約束をしていたのに遅くなってしまって。夕食のあと、執事に捕まってしまってな」
「本を読んでいましたから、お気になさらず」
「邪魔したようだな。本を読み終えるまで待つから、ゆっくり読んでくれ」
壁にもたれかかって腕を組もうとしたロレシオに、エルゼははにかむように微笑んでみせた。
「い、いえ、緊張して本の内容が全然頭に入ってこなくて……。今日はおしまいにします」
静かな部屋に、パタン、と本を閉じる音が響く。
ランプの灯に照らされたエルゼの白い頬は、心なしかほんのり上気している。ロレシオの心臓が大きく跳ねた。
「嬉しいことを、言ってくれる」
ボソリと呟くと、ロレシオは大股で部屋を横切り、椅子に座っていたエルゼを軽々と抱え、ベッドの上にあおむけに寝かせる。エルゼのガウンの裾がめくれあがった。机の上にあるか細いランプの灯が、ほっそりとした白い足を浮かび上がらせる。