過去の名君は仮初の王に暴かれる
 エルゼは慌ててガウンの裾を掴もうと手を伸ばしたが、ロレシオがそれを阻んだ。

「こら、隠さずに見せなさい」
「きゃっ……!」
 
 大きな手が柔らかなガウンの合わせの部分から入り込み、エルゼの太ももを直に撫であげる。普段は淑女らしく厳格に隠されている部分が、ロレシオによって暴かれ、露わになっていく。
 ロレシオの手がついに上半身に伸び、腰紐をほどく。ガウンは重力に逆らわず、なめらかな肌を滑り落ちる。シュミーズの類はつけておらず、エルゼはあっという間に一糸まとわぬ姿になった。

 柔らかで豊かな胸が、呼吸にあわせて上下している。双丘の頂は、誘うように薄桃色に色づいている。きゅっとくびれた腰に、ふっくらした尻。男を欲情させるには十分な、官能的な体つき。
 欲情の色をくゆらせた青灰色の眼がエルゼの身体を見つめる。

「……君は、本当に美しい。初めて見たその日から、心に決めた人がいたというのに、どうしようもなく惹かれてしまったほど……」
「あ、あまり見ないで……」
「そう言われても、君からしばらく目が離せそうもない。君の魂がイヴァンカ様のものだと知った時、深い安堵と一緒に納得をしたんだ。私が、君に惹かれるのは当然だったのだと。君がどんな姿に変わろうとも、私は君に惹かれるだろう。……私の、愛おしい人」

 愛おしい人、と呼ばれたエルゼはかあっと頬が熱くなったのを感じた。
 初夜には囁かれなかった甘い言葉に、身体の奥底が喜びにうち震える。愛されることを諦めた心が、ようやく満ち足りた気持ちでいっぱいになった。
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