過去の名君は仮初の王に暴かれる
(むしろ、ロレシオ様が汚れ役を買って出たようなものだわ。彼がいなかったら、いまごろサントロ王国はどうなっていたことか)
ロレシオを思いやったエルゼは、そっと武骨な手に自分の手を重ねた。
「この国の偉大なる国王が自らを賤しいなどと言わないでください。貴方には、素晴らしい経歴がおありなのですから」
新妻の心からの言葉は、ロレシオの心を慰めた様子はなかった。エルゼの優しい手は、すげなく振り払われる。
「私にそう優しい言葉をかけないでくれ。私はしょせん国賊なのだ。そんな輩に幸せになる資格はどこにもないだろう。当初の約束通り、私からの君への愛は望まないでくれ」
エルゼはハッとして口をつぐむ。
ロレシオには、長年片思いをしている相手がいるという。その相手を思い続ける限り、エルゼは彼に愛されることはない。それは、結婚する際に条件として内密に伝えられたことだった。
(ああ、そうだったわ……)
エルゼは切ない微笑みを浮かべる。
「わかっていますわ」
――わたくしなんかが、愛されないことくらい。
前世からずっと、分かっていることだ。
ロレシオを思いやったエルゼは、そっと武骨な手に自分の手を重ねた。
「この国の偉大なる国王が自らを賤しいなどと言わないでください。貴方には、素晴らしい経歴がおありなのですから」
新妻の心からの言葉は、ロレシオの心を慰めた様子はなかった。エルゼの優しい手は、すげなく振り払われる。
「私にそう優しい言葉をかけないでくれ。私はしょせん国賊なのだ。そんな輩に幸せになる資格はどこにもないだろう。当初の約束通り、私からの君への愛は望まないでくれ」
エルゼはハッとして口をつぐむ。
ロレシオには、長年片思いをしている相手がいるという。その相手を思い続ける限り、エルゼは彼に愛されることはない。それは、結婚する際に条件として内密に伝えられたことだった。
(ああ、そうだったわ……)
エルゼは切ない微笑みを浮かべる。
「わかっていますわ」
――わたくしなんかが、愛されないことくらい。
前世からずっと、分かっていることだ。