好きになってよ、俺のこと。
「……っ、うぅ」
私の目からは、ポロポロと涙が溢れ出てくる。
都輝くんが私のお弁当を『美味しい』と笑顔で食べてくれたときは、あんなに嬉しかったのに。
今目の前で私の血を求める都輝くんは、まるで人が変わってしまったみたいだ。
「こんなんじゃ、都輝くんのことを好きになるどころか嫌いになっちゃうよ」
言葉とともに涙が頬を伝ったとき、都輝くんの動きがピタリと止まる。
「……何をやってるんだ、俺は」
「え?」
「好きな子を泣かせるなんて俺、最低だよな」
呟くと、都輝くんの唇がそっと私の首筋から離れる。
見上げた都輝くんの瞳は、赤から黒へと戻っていた。
よ、良かった……。
「ごめん、亜実ちゃん。さっきの俺、どうかしてた。キミを泣かせるなんてことだけは、したくなかったのに……」
都輝くんが、私の目元の涙を優しく拭ってくれる。
「怖がらせてしまって、本当にごめん。好きな子を目の前にすると、どうしても血を吸いたい気持ちが強くなってしまうみたいで」
都輝くんが、私の制服のボタンを留めてくれる。
「でも俺、これからは頑張って我慢する。亜実ちゃんが嫌がることだけは、絶対にしたくないから。だけど……ひとつだけお願いを聞いてくれる?」