好きになってよ、俺のこと。
♯4
「おはよう、中城さん」
「おはよう、東くん」
先日の席替えで隣の席になってから、自然と東くんと話す機会が増えた。
「中城さん。この本、ありがとう。面白かったよ」
「えっ、もう読み終わったの!?」
東くんは私と同じで読書が趣味らしく、仲が深まるにつれて、私たちは本の貸し借りもするようになった。
「この分厚い小説を2日で読むなんて、凄いね」
「いやぁ、先が気になりすぎてさ。お陰で今日は寝不足だよ」
欠伸をする東くんの目元には、うっすらとクマができている。
「あっ、そうだ。中城さん、今日の放課後……」
「亜実ちゃん!!」
東くんが何か言いかけたが、教室にやって来た都輝くんによって遮られる。
「亜実ちゃん。昨日の弁当箱、返しにきた」
「えっ、わざわざ来てくれたの? 昼休みに会うときで良かったのに」
「俺が、亜実ちゃんに少しでも早く会いたかったからさ」
都輝くん。嬉しいけど、東くんもいる前で照れるなぁ。
「……ちっ。神山に邪魔された」
ボソッと呟いた東くんの声は、このときの私には聞こえなかった。