好きになってよ、俺のこと。
ショートヘアの女の子の話がなぜか気になり、私は思わず耳をすましてしまう。
「中城さんってもしかして……あの中城家の娘じゃない? ほら、“ Special Blood ” とかいう、特別な血を持つっていう家系の……」
「ああそれ、あたしも聞いたことがある。
それって、吸血鬼にとっては数少ない貴重な血なんだよね。
そういえば入学当初、クラスの吸血鬼の子たちがやたらと中城さんのこと見てたなぁ」
……何それ。
特別な血って、意味が分からない。
私の身体の中に、そんなものが流れているの?
「だから、神山くんも中城さんの血が目当てで近づいたのかもね」
「だよね。そうでないと、あの神山くんが中城さんと仲良くするわけないよね」
ーードクンドクン。
胸の鼓動が速くなる。
「どうしたの? 亜実ちゃん。顔色悪いよ」
都輝くんが心配そうな顔で声をかけてくれるも、頭がクラクラしてよく聞こえない。
ねぇ、都輝くん。
“ Special Blood ” とか、血のことなんて私には分からないけど。
あの女の子たちが言っていたように、やっぱり私の血が目当てで近づいたの?
そんなの、都輝くんは吸血鬼だから。
彼に専属契約を求められたときから、分かっていたはずなのに。
なんであの女の子たちの言葉が今、こんなにもショックなんだろう。
ああ、なんだかおかしい。
胸がやけにドキドキして、さっきから視界がぐるぐるとまわってしんどい……。
「亜実ちゃん!!」
私の身体が傾き、そのまま私の意識は遠のいていった。