好きになってよ、俺のこと。


──『あのね。お母さん、あなたに大事な話があるの』

『大事な話?』


絹のように滑らかな黒髪の綺麗な女性と、その女性の膝に座る幼稚園くらいのおさげの女の子。


亡くなったお母さんと、幼い頃の私だ。


これは、夢?


『いい? 亜実。あなたの身体には、他の人とは違う血が流れていてね。中城家は、代々 “ Special Blood ”という珍しい血を受け継ぐ家系なの。その血は吸血鬼にとっては、特別な血らしくて。
だから沢山の吸血鬼に狙われて、命を落としてしまったご先祖様も多いの』


『吸血鬼って、怖いんだね』


『そう、怖いのよ。あなたがこれから成長するにつれて、血の香りも強くなるだろうから。その分、吸血鬼にも狙われやすくなる。だから、くれぐれも気をつけて』


『うん、分かった』


──そうだ。お母さんが昔、ちゃんと私に話してくれていたんだ。特別な血のことを。


それなのに、どうして今まで忘れていたのだろう。


夢から覚めた私がうっすら目を開けると、白い天井が視界に入る。


そして、鼻を掠める薬品の匂い。


あれ、ここは……。


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