好きになってよ、俺のこと。
「亜実ちゃん! 良かった、気がついたんだね」
「中城さん、大丈夫?」
ベッドに横たわる私のそばには、都輝くんと養護教諭の先生がいた。
そうか、ここは保健室。
私はベッドから、上半身を起こす。
「亜実ちゃん、体育の授業前に倒れたんだよ。俺の目の前で倒れちゃったから、俺もう心配で心配で」
都輝くんが、私をギュッと抱きしめてくる。
「亜実ちゃんが無事で、本当に良かった」
「都輝くん」
都輝くんが、私を心から心配してくれているというのが彼の言動から分かる。
だけど……。
私は抱きしめてくる都輝くんの腕を、そっと解いた。
「……亜実ちゃん?」
「都輝くんは、私の血が目的で私に近づいたの?」
「急にどうしたんだよ、亜実ちゃん。違うよ。俺はずっと前から、亜実ちゃんのことが本当に好きで……っ」
私はこちらへと伸びてきた都輝くんの手を、パシッと払いのけてしまった。
「亜実ちゃん……?」
「そんなの、信じられないよ」
私はベッドから降りると、保健室を飛び出し廊下を走り出す。
「はぁ、はぁ……っ」
どうしてさっき、あんなことを言ってしまったのだろう。
都輝くんに、あんなことが言いたかったわけじゃないのに。
できることなら、都輝くんの言葉を信じたいのに。
先ほどの女の子たちの言葉を聞いた直後に、お母さんの夢を見た私は、都輝くんのことが信じられなくなってしまった。