好きになってよ、俺のこと。
「都輝くん。きゅ、救急車呼ぶね」
慌ててスマホを手にした私の腕を、都輝くんが掴む。
「いい、よ。ただの、貧血……だから」
「だったら、早く血を飲まなきゃ……!」
都輝くんが、弱々しく首を横にふる。
「俺、もう血は飲まないって決めたから」
「どうして……?」
「俺、亜実ちゃんの血を口にしたとき、すげぇ美味くて。それ以来、他の人の血は不味くて飲めなくなってしまった。やっぱり自分の好きな人の血が、一番美味しく感じるらしくて」
そうなの?
「それに俺、亜実ちゃんと約束したから。この先、亜実ちゃんの血しか飲まないって。そして何より、俺は人間が羨ましかったから」
……え?
「人の血を吸う吸血鬼なんかじゃなくて、俺も亜実ちゃんと同じ人間だったら……少しは亜実ちゃんも俺のことを、好きになってくれたのかなって思うんだ」