好きになってよ、俺のこと。
【都輝side】
あれは、今から10年前。
俺と亜実ちゃんは5歳の頃、同じ幼稚園に通っていた。
この頃は、今よりも人間と吸血鬼が激しく対立していた。そして、吸血鬼は空想上の生き物だと思っている人も多かったらしい。
そのため、自分が吸血鬼であることは隠して俺は人間の幼稚園に通っていた。
親の教育方針で、幼い頃から人との共同生活を経験しておいたほうが良いという理由からだ。
だけど、当時はおとなしい性格で人見知りの激しかった俺は、なかなか他の園児と打ち解けられずにいた。
いつも部屋の隅っこで、一人で車のおもちゃで遊んでいた俺に、初めて声をかけてくれたのが亜実ちゃんだった。
『ねぇ。都輝くんも一緒に、こっちでおままごとしない?』
可愛くて優しくて、皆からの人気者だった亜実ちゃんに声をかけてもらえて、とても嬉しかった。
それから亜実ちゃんはいつも俺に優しく声をかけてくれ、みんなの輪の中へと入れてくれた。
そのお陰で俺は少しずつ友達も増え、楽しい毎日を送ることができていたというのに……。