好きになってよ、俺のこと。
吸血騒動からしばらくして、このことを親に知られた俺は引っ越すことになり、幼稚園を去ることになった。
それと同時に、幼稚園の人々の記憶から俺の存在は抹消された。
亜実ちゃんに俺のことを忘れられてしまうのは悲しかったが、俺を助けたせいで俺と同じように園児からいじめられるようになっていた彼女が救われると思うと、耐えることができた。
ただ、亜実ちゃんに想いを伝えずに離れてしまったことだけがずっと俺の心残りだった。
亜実ちゃんは、俺の初恋の人だったから。
何年経とうと、彼女を忘れることはなかった。
小学生以降、俺に近づいてくる女の子は何人かいたけれど、亜実ちゃん以上の人はいなくて。
だから、亜実ちゃんの身体から漂う甘い血の匂いを頼りに、俺は引っ越してからもずっと彼女のことを探していた。
そして10年の時を超え、ようやくこの月森学園で亜実ちゃんと再会することができたというわけだ。