転生したらエルフの幼女でした。前世と同じように過ごしているだけなのに頑張り過ぎだと言われ、神童と呼ばれています。人間の国で王子の家庭教師をやらされる事になったけど、お菓子が美味しいので頑張ります。

第7話 光魔法の使い方

 長老から私の身長の半分くらいの木の枝っぽい杖を渡され、テンションが上がりまくる。
 これで私も一人前の魔法使いなのかも!
 ワクワクしながら待っていると、長老さんが別の枝で地面にゆっくりと文字を書く。

『照明』

 なるほど。光魔法の勉強をする訳だし、辺りを照らす事から始めるのね。
 魔法の本の初級編で分かったけど、水魔法で水を出したり、木魔法で近くの木に実を付けたりと、一番最初はその魔法の基礎の基礎から始めるっぽい。
 なので、光魔法で照明とは正に……と言った感じよね。

「では、ソフィアに光魔法を教えよう。その枝で、ワシが書いたこの神代文字を地面に書くのじゃ」
「ん? ……枝? 杖じゃなくて?」
「うむ。それはただの枝じゃ。その辺に落ちていたものじゃ」
「……そ、そっか」

 残念。杖じゃなくて、本当にただの枝だったんだ。
 ちょっとがっかりしつつも、長老が書いた通り、照明という文字を書く。

「ふむ。流石じゃな。まさか、一目見ただけで書けるとは……まぁ良い。では、この神代文字に自身の魔力を干渉させるのじゃ。すると、このように……はぁっ! ほれ。仄かに光っておるじゃろう」

 長老さんが光魔法「照明」を発動させ、ほんのり明かるくなったような気がする。
 まぁ森の中とはいえ、朝だからね。
 とりあえず私に光魔法の使い方を教える為だし、こんなものなのだろう。

「では、ソフィアもやってみるのじゃ。ソフィアは才能があるようだし、もしかしたら十日くらいで成功するかもしれんな」

 十日……って、相変わらず長老は時間感覚がおかしい。
 これまで家で何度も中級魔法の練習で、魔力に干渉するというこの世界独特の感覚にはもう慣れている。
 十日なんて言ってないで、私の将来の為にも今日中に成功させてみせるんだからっ!
 先程書いた文字に触れて魔力を干渉させると、文字が白く光り……って、大丈夫なのっ!?

「ひ、光ったけど……長老さん!?」
「な、なんじゃぁこりゃぁぁぁっ! 見えん! 光が強すぎて、何もかもが真っ白じゃぁぁぁっ!」
「長老さんっ! これ、どうやったら止められるんですかっ!?」
「も、文字じゃっ! 神代文字を消すのじゃぁぁぁっ!」

 目が痛くなるので、目を閉じ、かつ手で目を抑えていても光を感じる程の光の中で、たぶんこの辺だと思うところを足で擦り、照明の文字を消そうと試みる。
 中々消えなかったみたいだけど、少しして光が収まって……うぅ。目が痛い。

「そ、ソフィアよ。光は……光は消えたのか!?」
「長老さん。もう大丈夫ですよ。それより、治癒魔法を使ってくれませんか? 目が痛くて」
「いや、ワシも目が痛くて、魔法が使えぬのじゃ。治癒魔法は光魔法じゃから、神代文字を書かねばならぬ」
「え? でもこの前は『ヒール』って言って、治癒魔法を使っていましたよね?」

 長老に治癒魔法を使ってもらったのは、この世界に転生した初日の事だからよく覚えている。
 あの時は、文字なんて書いていなかったよね!?

「ふっふっふ。良いところに気付いたの。あれはソフィアのお友達が先にワシのところへ来ていて、ソフィアが木から落ちたと聞いておったからな。事前に紙に治癒魔法の文字を書いて準備済みだったのじゃ」
「え? じゃあ、ヒールっていう言葉は?」
「そう言った方が格好が付くじゃろ」

 えぇー。いやまぁ治療してくれたから良いけど、孫に格好付けなくても……いや、むしろ孫だから?
 孫どころか子供もいた事がないから分からないけど、格好良い大人の姿を見せたいものなのかな?
 結局、治癒魔法に使う文字が何か教えてもらう前に、私が出した光を見た村の人が何事かとやってきて、私と長老さんを家に連れて行ってくれた。
 うーん。とりあえず、当面の私の課題は、魔法の効力のコントロールかな。
 幸い、まだお父さんの本で見た事がないけど、今のまま火魔法とか氷魔法を使ったら、大惨事になりかねないもんね。
< 7 / 40 >

この作品をシェア

pagetop