妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 シルディアが黙り込んでいると、オデルが魅力的な提案を口にする。

「朝食も食べ終わったことだし、部屋を案内しよう」
「! いいの?」
「もちろん。シルディアが好きに出入りしていい場所だけになるけど、いいかい?」

 気遣うような視線がくすぐったくて、シルディアは口を噤んだ。
 人に気遣われるという行為が心地の良いものだと初めて知った。

(命令すればいいだけなのに、わたしの意思を確認するなんて……非効率だわ。でも、嫌じゃない)

 シルディアが黙り込んだことに眉を顰めたオデルがぼそりと呟く。

「やっぱり不満だよな。城内にいる者達を全員排除すれば……」
「どうしてそうなるの!?」
「え? 俺の白百合をどこの馬の骨かもわからない奴に見せるわけにはいかないから、当たり前の対応だよ」
「わたしが場内を歩くためにそこまでする!? 普通に城内を案内できないの!?」
「シルディアを誰にも見られたくないからな」
「減るものじゃないでしょ」
「減る。確実に」
「ちなみに、私を見た人はどうなるの?」

 シルディアの質問にはなんでも答えると豪語していたオデルは、にっこりと綺麗な笑顔を浮かべた。

「知りたい?」
「そうね」
「まずシルディアを見たその瞳を抉り出し、声を聞いた耳をそぎ落とす」
「ちょ、ちょっと待って。やりすぎだわ」
「?」

 心底何が悪いのか理解できないと首を傾げられる。
 その様子に目を見張ったシルディアは立ち上がり、ワゴンに食器を並べるオデルの両頬に手を添えた。
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