妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「わたしは、そんなことしてほしくない」
「……」
「今、オデルがわたしを外に出すことに不安を感じるなら、わたしは外に出なくてもかまわない。わたしのせいで人が死ぬのはごめんよ」
「……シルディアは外に出たい?」
「出たいか出たくないかと言われれば、出たいわ。でも、わたしのせいで誰かが傷つくのは……」
「わかった」

 説得に成功しシルディアはほっと胸をなでおろした。
 オデルの頬から手を離そうとするが、手を取られてしまった。
 左手にすり寄る彼に驚き目を向ければ、楽しげなルビーのような瞳と目が合った。
 絹のような黒い髪が少しくすぐったい、とシルディアは現実逃避をするが、それも数秒許されただけだ。
 指一つ一つに口づけをするオデルを止めることもできず、なすがままになっている。

「ちょっと、や、ひゃぅ。痛っ」

 それは五本の指全てに口づけをし、シルディアが終わりかと肩の力を抜いた瞬間だった。
 オデルはあろうことか薬指に噛みついたのだ。
 首筋を噛まれた時のように血は出なかったが、薬指の根本にはくっきりと歯形が刻まれてしまった。

「よし」
「っ、よしじゃない!!」

 振りかぶった手を簡単に受け止められ、シルディアは唇を噛んだ。
 オデルの指先がシルディアの唇をなぞり、優しく唇を開く。

「綺麗な唇なんだから、噛んだら駄目だよ」
「誰のせいだとっ……!」
「俺のせいだね」
「理解してるのなら」
「ごめんね? でも、俺のものだって印はつけとかないと」
「はぁー。ここで論争しても無駄ね。部屋、案内してくれるんでしょ?」
「うん。少し待ってて」

 そう言い残し、オデルは食器を乗せたワゴンを厨房に戻しに行った。
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