妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「こんな手段でわたしがごまかされるとでも?」
「……」
「それに、わたしの質問にはなんでも答えてくれるんでしょ?」
「まいったな」

 観念したのかオデルは、シルディアを自身の膝に乗せた。
 優しく腕を回されてしまえば、抵抗する気も起きない。
 シルディアは近づいた距離をものともせず、彼の目元に手を添えた。

「本当、酷いクマ。綺麗な顔が台無しよ。いつからちゃんと寝れていないの?」
「……生まれてからずっと、かな」
「睡眠を取らないと正常な判断はおろか、死に至ることもあるのよ?」
「竜族は多少寝なくても死にはしない。ある意味頑丈だから」
「どうして寝れないの?」
「皇族は全員竜族なのは知っているよね?」
「えぇ」

 目元をなぞる手にオデルがすり寄った。
 まるで甘えるような行為に、シルディアの鼓動がわずかに早くなる。

「竜の王になるものに与えられる試練がある」
「試練……?」

 初めて聞く皇族の事情に、シルディアはごくりと喉を鳴らした。
 いつの間にか握り込んでいた手にオデルの手が絡められる。
 まるで緊張を解すように繋がれた手にほんのりと温かな気持ちが胸に広がった。

「そう、試練。竜の王が必ずつがいを見つけ出せるように、見つけたいと思わせるための、忌々しい試練さ」
「それが、寝れない原因なの……?」
「端的に言えばそうだね。でもシルディアの思っているようなものじゃないと思うよ」
「え? つがいを見つければ寝れるようになるんじゃないの?」
「本当、素直で可愛いね、シルディアは。そんな単純なものじゃないんだ」
「どういう……?」

 意味がわからずシルディアは首を傾げる。

「分からなくて当然だよ。前に言ってたよね。顔色ぐらいコントロールできるって」
「言ってたわね」
「それは試練の副産物」
「? 余計意味がわからないわ」
「だろうね」
「……煙に巻こうとしていない?」
「……まさか」

 にっこりと笑ったオデルは、意を決っしたように声を絞り出した。

「四六時中、激痛が体中に走っているんだ」
「は……?」
「だから、竜の王に選ばれ者は痛みに呻く姿を見せないために顔色をコントロールできるようになる」
「……」
「痛みの原因は膨大すぎる魔力。たとえ竜族といえど、許容量があるからね。神話の時代から受け継がれる竜の王という位は、信じられないほど力を持っているんだ」
「それは……」
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