妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 手だけでヴィーニャに退出するよう指示を出し、オデルはシルディアの隣を陣取った。

「何してたの?」
「皇王の座につくことなく散った竜の王になんの共通点があるのかなと思って調べていたのよ」
「なるほどね。なにか共通点は見つかった?」
「えぇ。二十歳になるまでに皆死んでいるの」
「魔力量に耐えられなかったんだろうね」
「やっぱり」
「魔力暴走って何かわかる?」
「ヴィーニャに聞いたところよ」

 そう答えると、オデルは露骨に残念そうな顔をした。
 シルディアの為なら何でもやりたがる彼のことだ。自分で説明をしたかったのだろう。

「今オデルは何歳?」
「二十五だよ」
「二十歳は超えているのね。じゃあわたしの思い違いかしら?」
「ん? なにがだい?」
「オデルはまだ魔力暴走が治まっていないんじゃないかって思って」
「……どうしてそう思ったの?」
「さっきヴィーニャが言っていたの。魔力細胞の破壊と治癒が交互に起こって地獄のような痛みを引き起こすって。オデルが痛みで寝れないのはそれじゃないかなと思ったんだけど……ってちょっと!?」
「可愛い上に賢いとか、最強だよね」

 伸びてきた手が白色の髪を掬ったかと思うと、口づけられる。
 突破知的な行動の意味が分からずシルディアは困惑を隠せなかった。
 しかし、それがすぐにオデルが話を逸らすためだと気が付いた。

「そうやってすぐはぐらかそうとする。で、どうなの?」
「……シルディアの思い違いだよ」
「それもそうね。二十歳までにふるいにかけられて亡くなってしまうんだから、もう二十五歳のオデルは克服できたってことになるもの」

 ふとした疑問がわき上がり、考え込む。

(とすると、克服者には何か共通点が……? 魔力暴走を克服できる何かがある……?)

 不意に肩に回された腕に驚いたシルディアがオデルに目を向けた。
 真剣な赤色の瞳に射貫かれ、固まってしまう。

「何を考えていたの? 教えて」
「え、えっと、今考えていたのは、竜の王はどうして魔力暴走を克服できたのか」
「なんだ。そんなことか」
「そんなことって……。わたしは真剣に悩んでいるのよ?」
「ここにヒントはあるのに」

 オデルの切れ長な瞳の奥にある隠しきれない熱。
 その熱の意味を、シルディアはもう知っていた。
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