妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 部屋全体に張り裂けそうな殺気が満ちる。
 責めるような無言の声が見えない矢になって突き刺さった。
 シルディアは自身にまとわりつく蛇よりも重い執着を宿す赤い瞳を真っ正面から見据える。

「こんなの、監禁と一緒じゃない」
「……」
「ずっとオデルに従ってきたけど、もう飽き飽きなの」
「……」
「一日中部屋にいることには慣れてるから別に構わない。だけど皇妃教育をするわけでも、皇国について勉強させてくれるわけでもない。ただ一日部屋に籠るだけ。ただ時間を持て余すだけ」

 無言のオデルに、シルディアは溜め込んでいた不満を言葉にして投げつける。

「そんなの……アルムヘイヤにいた方がマシじゃない!」

 ぴくりとオデルの眉が反応を示す。
 だがそれでも喋る気はないようで彼はじっとシルディアを見下ろしていた。

「ヴィーニャにずっと監視させて、わたしのこと信用してないのが透けて見えるのよ。傷つけたくない? 違うわね。あなたは自分が傷つくのが怖いだけ」
「……」
「わたしのために入手困難なアルムヘイヤの書物も集めてくれたんだって、嬉しかったのに……。竜の王について調べたからって、書庫の立ち入りを禁止するなんて……!!」
「……」
「わたしは一人の人間で、人格もある。人形じゃないの」

 無言を貫くオデルは顔色一つ変えず、シルディアを観察している。
 それが酷く癪に障った。

「どうせ、わたしはオデルのつがいではないんでしょ!? だからこうしてわたしが怒っても動揺しない」
「……」
「手放したくない、愛する君、自分が選んだ、ってあなたは言うけど、いまだに竜の王の意識について教えてもくれない! あなたは秘密ばかり。それどころか隠そうとする。本当はわたしのことなんて、どうでもいいんでしょう!?」
「言いたいことはそれだけ?」

 首を傾げオデルは笑った。
 見惚れるような笑顔だが、目が笑っていない。
 どうやら怒らせることに成功したらしい。
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