妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 ニエルドに言われなくとも、魔力暴走がすぐそこまで迫っているのは理解していた。
 本来であれば二十歳までにつがいを得られなければ、体を乗っ取られる。
 オデルが二十五まで乗っ取られずいるのは、シルディアのお陰だ。
 幼い彼女に出会い、一時でも心を通わせることができたから生き長らえている。

「俺が擦り切れる前に、早く、早く目を覚ましてくれ。お願いだ。もう一度、女神のような笑顔を見たいだとかそんな事、もうどうでもいい。シルディアさえ生きていれば、それで……」

 滑らかだったはずのシルディアの頬は、この一週間で潤いが無くなってきていた。
 身を乗り出し、指先で彼女の少しかさつく唇をなぞる。当たり前だが反応は返ってこない。

「守ってやれなくてごめん」

 もう一度シルディアの手を握りしめた、その時。
 彼女の指がピクリと動いた。
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