妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 今までにない反応。

(え、なに。この可愛い生き物)

 赤くなった指先に口づけを落とす。
 驚いて引こうとした手に、自身の手を絡めた。
 追い打ちをかけるように甘い言葉をシルディアに贈る。

「俺はね、ずっとシルディアだけを見てきたんだ。それだけは知っていてほしい」
「ずっと……?」
「そう、ずっと。俺はシルディアと出会ってから、心が満たされる幸せを知った。俺がシルディアと出会って救われたように、俺もシルディアを救いたかった」
「別にわたしは不自由していないわよ?」
「でもずっと妖精姫の影武者をしていたよね? そんなことをし続ければ、俺の好きなシルディアがいなくなる気がしたんだ」
「フロージェとして振舞っていても、わたしはわたしだわ」
「うん。俺の杞憂だったね。強気で優しいまま、美しく成長していた」
「わたしが美しいのではなくて、フロージェが美しいのよ。わたしはフロージェの生き写しだもの」
「自己肯定感が低いのもいいけど、俺のシルディアは世界で一番綺麗だよ」

 顔色の悪いシルディアの肩を軽く押せば、ぽすんと寝台に倒れ込んだ。
 薄い水色の瞳が大きく見開かれ、警戒心を露わにする。

「なにを……」
「しんどいなら寝転んで話そう? 我慢は良くないよ」

 名残惜しさを感じつつも繋いだ手を離した。
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