妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「だからといって妖精姫であるフロージェを差し出すのは……我が国の損失が大きすぎる」
「じゃあどうするというのです? 断れば戦争になるやもしれませんよ。それとも陛下には、この窮地を打開する策があるとでもいうのですか?」
淡々と事実を述べる王妃は正しい。
「だが、フロージェが嫁がないと言っている以上、断るしかあるまい。もし無理やり嫁がせたりしてみろ。妖精たちが黙ってはいない!」
「そうやってフロージェばかり贔屓して……」
「何を言うか! 禁忌の存在である双子を生かしてやったんだ。感謝される云われはあれど、憎まれる云われはないな」
喧嘩を始めそうな国王夫妻に静止をかける。
「お母様もお父様も、落ち着いてください」
「王妃も陛下も落ち着いてください」
シルディアとフロージェの声が重なる。
二人の声にはっと我に返った国王が、シルディアの顔を見て、いいことを思いついたと言わんばかりに声を上げた。
「求婚をされたのは影武者なのだから、お前が皇国に嫁げばよかろう」
「……ご命令とあらば」
切羽詰まった目を向けられたシルディアはそう答える他なかった。
なにせ、自身の命はフロージェのためにあるのだから。
「影武者姫としての最後の仕事だ。フロージェとして皇国に嫁げ。絶対にバレるようなヘマはするなよ」
「御意」
こうして皇国に嫁ぐことになったシルディアは、手持ちカバン一つに収まってしまう私物を持ち皇国へと旅立ったのだ。