妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 衝立が用意されたのなら手早く着替えなければならない。なにせ夜会の時間が刻一刻と迫っているのだから。
 白色のドレスを受け取ったヴィーニャに従い、オデルに背を向けた。
 その時、

「あ、ちょっと待って」
「っ!?」

 首筋に一瞬走った、チクリとした痛み。
 びくりと肩が跳ねたのはしかたのないことだろう。
 オデルの予想外の行動を窘めたのはヴィーニャだ。

「皇王陛下。今、キスマークをつけられては隠せません。自重してくださいませ」
「きっ!?」
「隠さなくてもいい。俺のものだと知らしめるチャンスだろう?」
「表向きはまだ婚約です。初夜もまだだとお忘れですか? それとも、シルディア様が婚姻前に体の関係を持つようなふしだらな女だと吹聴されてもいいと?」
「なっ!?」
「それは困るな」
「でしたら自重なさってください」

 驚きで言葉にならないシルディアをよそに話は進んでいく。
 いいことを思いついたと言わんばかりに笑ったオデルがシルディアを後ろから抱きしめる。
 そして――

「ひゃっ!」

 ――もう一度噛みついた。
< 65 / 137 >

この作品をシェア

pagetop