妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 首筋に這う、生温かなぬるりしたものがオデルの舌だと気が付くのに時間はかからなかった。
 しかし、彼が離れる気配はない。
 何度も首筋に吸いつかれ、小さな痛みがシルディアを襲う。
 小さな痛みに耐えていれば、不意に大きく噛みつかれた。そのたびにシルディアの肩はびくりと跳ねる。
 弄ぶだけ弄び、満足したのかオデルはリップ音を立てて、顔を上げた。

「ん。ごちそうさま」
「なっ、な、何を……」
「それ、あげる」

 呆れ顔のヴィーニャが用意した手鏡を見れば、オデルの瞳の色をした首飾りが首元で輝いていた。
 全体が宝石で出来ているようで首にぴったりと密着するそれは冷たい。

「ルビー、ではないわね」
「ルビーレッドアンバーだね。赤色の琥珀ともいう。特注で作らせたんだ。シルディアが俺のものだって証」
「ありがとう。でももう少し普通に渡せないの? さっきの、恥ずかしかったわ」

 頬を赤らめるシルディアに嫌悪の色はない。
 シルディアはオデルを受け入れつつあった。

「普通に渡したらつけてくれるか分からないからさ」
「贈られたものならちゃんとつけるわよ。失礼ね」
「俺しか外せないって言っても?」
「え? いやいやいや。流石にそれは……」
「ほらぁそういう反応する」
「誰が事後報告で大丈夫って言うのよ!?」
「シルディア様。そろそろお時間が……。先に着替えを済ませてしまいましょう。その後でじっくり話し合えばよろしいかと」
「そうね。あとで覚悟しておいて!」

 シルディアはそう捨て台詞を吐き捨て、着替えるために衝立の奥へと足早に進んだ。
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