妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
 オデルが自然な動きでシルディアに向いた視線を遮るが、全てを遮ることはできない。
 上皇夫妻から適度に離れた場所で立ち止まれば、途端に参加者達に囲まれたしまった。
 代わる代わる挨拶にやって来る参加者達の相手を能動的に行う。

「皇王陛下。ご婚約おめでとうございます!」
「あぁ」
「ぜひアルムヘイヤ国でのお話をうちの娘に!」
「取り立てて語るようなことは何もないな」
「つがい様、なのですよね?」
「それ以外に俺の隣に立てる者がいるとでも?」
「い、いえ……」
「俺が選んだ皇后だ。よもや側妃などと戯言を吐くつもりではなかろうな?」
「滅相もない!」

 いつもの口調ではなく、少し荒い口調で喋るオデルの背に隠されているシルディアは、笑みだけは絶やさずにいた。
 しかし、表面上真剣に聞いている風に見えるだけだ。
 先ほどから心ここにあらずだが、シルディアの視線はオデルを捕らえて離さない。

(この口調の方がしっくりくるわね。どうして上皇陛下みたいな口調をしているのかしら?)

 しばらく同じような会話を繰り返していると、オデルが唐突にシルディアの肩を抱いた。

「俺のつがいは疲れているんだ。また後で話は聞こう。少し休ませてくれ」

 挨拶に来た参加者達は面食らったような顔をしていたが、皇王であるオデルの言葉に従ってすんなりと引き下がった。
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