妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「そもそもなんで昔の自分に嫉妬するのか分からないのよ。だって自分よ?」
「竜族でない人には分からない感覚かもしれないですね。竜族は目の前の自分を深く愛して欲しいんです。過去の自分と今の自分は別物なんですよ」
「うーん? 分かるような、分からないような……?」
「お時間がある時に直接お聞きしたらいいと思いますよ。きっと答えて下さいます」
「それを本人に聞くのは流石に恥ずかしいわ」
「そういう可愛らしいお顔はぜひ皇王陛下の前でなさってください」
「だからそれはどういう顔よ……」
シルディアが肩を落とせば、ヴィーニャがくすりと笑う。
「シルディア様はそのままでいてくださいね」
「変わるつもりはないけれど……どうして?」
「長い年月は人を……変えてしまうものですから」
寂しげに呟かれる。
消え入りそうな声にシルディアは思わずティーカップを口に運ぶ手を止めた。
盗み見たヴィーニャはひどく哀愁が漂っており、かげりのある表情を浮かべていた。
「……何かあったのか、聞いてもいい?」
「十二年前、竜の怒りを買った者がいます」
「竜の怒り……?」
「その名の通りです。その者は慈悲深い心を持っていましたが、いつしか心を蝕んでいた闇に囚われてしまったのです」
「その人はどうなったの?」
「一命を取り留めました」
「そう」
「ただ社交界から永久追放となりましたけどね」
からりと笑ったヴィーニャは、シルディアが口を開く前にあからさまに話題を変えた。