妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「もうそろそろお色直しなさいますか?」
「えぇ。紅茶を飲み終わったら夜会に戻ろうかしら」
ヴィーニャはワゴンの真ん中に用意していた化粧箱を取り出す。
用意がいいと横目で見つつティーカップを手に取った。
瞬間。
扉と窓が同時に開かれた。
と同時に白煙が入り込む。
「シルディア様!」
「っ!? げほっ」
目の前が視認できないほど室内に白煙が立ち込め、シルディアは思わず咳き込んでしまった。
途端に歪む視界。吐き気すら覚える感覚。
(うぁっ)
ぐるぐると視界が回る。
姿勢を保つことができず、シルディアはソファーに手をついた。
現状を把握しようと必死に目を凝らせば、影が二つ白煙の中を動くのが見えた。そのうちの一人はヴィーニャだろう。
(ヴィーニャって戦えたの? オデルが私に護衛をつけなかったのは、そういう……?)
場違いなことを考えていたからだろうか。目の前を化粧箱が通り過ぎた。