妹の身代わりで嫁いだ姫は、ヤンデレなはずの皇王にとろ甘に溺愛される(旧 ヤンデレ皇王のつがいはデレ改革をお望みです ~加虐系ヤンデレはデレデレにデレチェンジ~)
「あなた、何をして社交界を追放されたの?」
「おやおや。理由までは話さなかったようですね。困った娘だ」
「……娘?」
「私の娘と一緒にいたでしょう? つい先程まで」

 娘という言葉の指す人物が誰なのか、考えるまでもない。
 シルディアと一緒にいた女性はヴィーニャしかいないのだから。
 けれども彼女は目の前の男と同じ色の目をしているが、それだけでは判断ができずシルディアは聞き返した。

「ヴィーニャがあなたの……賊の娘だと?」
「はい。出来の悪い娘でして、ご迷惑をおかけしているでしょう。申し訳ない」
「迷惑なんてしていないわ。ヴィーニャは優秀な侍女よ」
「……そうですか。お役に立てているようで安心しました」

 この状況で世間話を始める男にシルディアは眉を顰めた。
 何かがおかしいと感じるのは自然の流れだろう。

(どうして今この話をするの?)
「まぁ私にとっては、なんの情報すら掴めぬ愚図な娘ですがね」
「……情報?」
「つがい様であればご存知でしょう?」
「一体なんの話?」
「あの憎き皇王の弱点をですよ」

 オデルに弱点など存在しないだろう。
 意味がわからず黙り込んでいれば、男はわざとらしく大きなため息をついた。

「みなまで言わねば分かりませんか。しかたないですね」
「あの人に弱点なんてないわ」
「いいえ。竜族に生まれたからには必ずどこかにあるはずです。特別な部位が。竜の逆鱗が――!!」

 男はいたく興奮した様子だ。
 しかし、シルディアにとってそれは聞き慣れない言葉だった。
< 99 / 137 >

この作品をシェア

pagetop