シリウスをさがして…
彼氏じゃない人とデート
玄関のドアがガチャリと開いた。
「ただいまー。」
大越家ではさとし、紗栄、陸斗の3人が帰宅した。
「おかえり。」
リビングでポップコーンを食べながら、映画を見ていた悠灯は答える。
「さっき、駅で駅弁買ってきた。夕飯はこれでいいかな。悠灯の好きな牛タン弁当ね。陸斗はいかめしだっけ、紗栄は幕の内、俺はステーキ丼。」
食卓の上にお弁当を並べ始めた。
「今日は豪華だね。でも夕飯にはまだ早いよね。16時だし。」
「そうだね。たまには、休みたいなと思ってさ。この頃、疲れてきてるんだわ。俺も…。あんなに料理しまくってたのに、家と仕事はやっぱり別物よね。」
「そりゃそうでしょう。私も我が家は1番だと思うし、リラックスできるよね。会社で用意してくれる社員アパートとかホテルとか泊まるけど、落ち着かないのよね。お家が1番!1番、仕事は仕事。」
「さぁさぁ。休もう休もう。」
さとしは冷蔵庫から泡の出る缶ビールを開けて早速飲み始めた。
「私も飲む!」
「はいはい。つまみもあるよ。確かこの引き出しにミックスナッツがあったかな。」
さとしはさらに冷蔵庫から缶ビールと引き出しからミックスナッツの大袋を取り出した。
キースタンドに車の鍵をかけるとソファに座った陸斗が
「大人たちは良いね。ビールで乾杯ですか。俺たちにはないの?」
台所を指差して
「床下収納に、大きいペットボトルのコーラ入れてたよ。飲んだら?」
「はいはい。自分でですね。悠灯は?飲むの?」
「あ。既にここにあります。紅茶のペットボトル飲んでました。」
「了解。自分の分ってことね。」
まったりとカーペットやソファにくつろぎながら、十数年前にヒットした恋愛映画を家族みんなで鑑賞し始まった。
陸斗はそばにあったクッションを膝の上に乗せて、悠灯はソファを背もたれに、さとしと紗栄はソファのそれぞれ右側左側に腰掛けていた。
「…そういや、陸兄、昨日どうだったの?」
「え!? 何の話よ。」
「だって、今朝、つ…。」
言おうとした口を陸斗はふさいだ。
「あ、あ、あー。それね。そのことは、何とかなったよ。ツーリング行こうよって康範に誘われてたんだけど、断ったんだ。」
悠灯は紬のことが話したかった。
(苦しいんだけど!)
紬はモゴモゴ話す。陸斗は小声でその話はするなと念を押した。
「へー。康範くん、免許取ったの?乗るの車じゃなくバイクなの? 陸斗とそんなに乗りたかったんだね。一緒に行けばいいのに。」
「え!? だって、怖いじゃん。また事故ったら、まだ車の方が安全。」
「事故なんて、宝くじが当たるくらいの確率だって、いくら気をつけててもぶつかる時はぶつかるし。確かに車の方がね、守られてるし…。てか、陸斗、俺が用意してた冷蔵庫に入れてたもの紬ちゃんに渡してくれた??」
話を切り替えて言うさとし。
「あ、あーーー。それね、うん。渡したよ。すっごい喜んでた。」
「喜んでたなら、良かった。それ、行列ができる店で買ったんだよ。女子には人気らしくてね。」
「私たちにはないの?」
紗栄と悠灯はお互いに見つめあう。
「あ、今度買ってきますから。楽しみにしててください。」
さとしは冷や汗をかいた。
「それよりも紬さんって深月よりも大人っぽいよね。同じ年なんでしょう。」
「え、悠灯って紬ちゃんと会ったの?」
「あーだって…今朝見かけてさ。」
陸斗が両手を悠灯の前にぐちゃぐちゃに振って言わないようにしようとしたが、その行動が怪しかった。
「さっきから、陸斗何したの?悠灯の前でぐるぐると手を動かして…。」
「昨日泊まったんだって。紬さん。」
「あああああああ!なんで言うのよ。」
「言ったって減るものじゃないでしょう。どーせバレるって。部屋干しのバスタオル2枚もあるんだから。」
さとしと紗栄はふと部屋干しハンガーを見るとバスタオルが確かに干してある。陸斗は、乾燥機に入れてたことを思い出す。
「ごめんね、陸兄。私の服早く乾燥機で乾かしたかったから、そこに干し直したのー。」
紗栄とさとしは小声で話しだす。
「やっぱりそうなったじゃない。」
「別に俺は望んだことっていうか容認してるし。」
「大丈夫だったかな。」
「あんま、深く聞くなって。」
ソファでゴニョゴニョと夫婦してラブラブな様子だった。悠灯がそれを見てイラッとする。
「ねぇ、2人で仲良く何、話してるの?」
「ううん。なんでもない。」
「陸兄がどこまでやったか知りたいんでしょう。」
「そんなことないよ。別になぁ。」
「ええ、そうよ。」
「んで、どうなん?」
陸斗は、ベランダの方に体を向けて、両膝を抱いている。頭にはヘッドホンをつけて、音楽をききはじめていた。
「悠灯、あんまり問い詰めないで、陸斗が嫌がっているんだから。恥ずかしいんでしょう。分かってあげて。」
「…私の勘では、きっと黒だと思うな。紬さん、会った時、めっちゃお肌ツヤツヤしてたし。ね、お母さん、した後は、女子は綺麗になるんだもんね。」
その話をすると、ヘッドホンを聴きながら、陸斗の両耳はお猿さんのように真っ赤に染まり始めた。
リズムよく音楽に乗ってはいるけども,会話していることは丸聞こえだった。
「…うん、そっとしておこう。」
「確かにその説は否めないけどね。お赤飯だね。」
「そう言うのもお赤飯なの?ちらし寿司とかじゃなくて…。」
「分からない。おめでたいことだから?」
そんなこんなで、大越家では陸斗が大きな一歩を踏み出し、成長したんだと、お祝いした。
恥ずかしすぎる陸斗のことを考慮して、詳細はあえて聞かなかった。
実際にはお赤飯やちらし寿司は作らなかったが、ビールやコーラで乾杯をした。
ーーー
数日後、
紬はそれとなくオシャレをして、仙台駅中のステンドグラスの前で待っていた。
土曜日だということもあって、人の出入りは多く,待ち合わせしている人も多かった。
スマホの画面を見ながら、待っていた。陸斗とお泊まりをしたという日からしばらく経っているが、陸斗は安心しきった感じがあるようで前ほどこまめにラインのメッセージ交換はしてなかった。
何回もライン画面を,見ては寂しいなと思っていた。
その様子を少し遠くから覗く1人の男性がいた。
宮島洸だった。
脅すような形で今日は無理やりデートにこじつけた。陸斗にも言っていた通り、洸は紬を,狙っていた。チャンスを探していた。
一喜一憂している紬が微笑ましく思えた。
「おはよ。ごめんね、朝早くに呼び出して…朝苦手なの知ってるんだけど。」
「おはようございます。朝苦手なのはその通りですけど、今11時ですよ。この時間なら起きられます。」
洸は紬の頭にポンと手を置いた。
「まあまあ、怒らない。お腹すいたでしょう? どっか食べに行こう。」
ジャケットのポケットに手を入れて歩き出す。紬は小走りで着いていく。
「今日のこと、陸斗は知ってるの?」
「…最近、連絡取ってないので。受験のことで忙しいのかもしれないです。」
「え、うそ。言ってないの? 俺ら、陸斗に内緒の関係? 大丈夫、それで。」
かまをかける洸。
「え…そ、それは。」
「良いんだよね、別に。」
洸は強引に左手をつかんで、手を繋ぐ。
「オムハヤシで有名なお店があってさ、おごるから食べに行こう。あ、でも、ラグドールにもオムライスメニューあって飽きてるかもしんないけどさ。」
「……う~ん。」
複雑な表情のまま、なすがままについていく。
洸は鼻歌を歌いながら、ペデストリアンデッキを紬を引き連れて歩いていく。
街は人々がそれぞれに行き交っていた。
「ただいまー。」
大越家ではさとし、紗栄、陸斗の3人が帰宅した。
「おかえり。」
リビングでポップコーンを食べながら、映画を見ていた悠灯は答える。
「さっき、駅で駅弁買ってきた。夕飯はこれでいいかな。悠灯の好きな牛タン弁当ね。陸斗はいかめしだっけ、紗栄は幕の内、俺はステーキ丼。」
食卓の上にお弁当を並べ始めた。
「今日は豪華だね。でも夕飯にはまだ早いよね。16時だし。」
「そうだね。たまには、休みたいなと思ってさ。この頃、疲れてきてるんだわ。俺も…。あんなに料理しまくってたのに、家と仕事はやっぱり別物よね。」
「そりゃそうでしょう。私も我が家は1番だと思うし、リラックスできるよね。会社で用意してくれる社員アパートとかホテルとか泊まるけど、落ち着かないのよね。お家が1番!1番、仕事は仕事。」
「さぁさぁ。休もう休もう。」
さとしは冷蔵庫から泡の出る缶ビールを開けて早速飲み始めた。
「私も飲む!」
「はいはい。つまみもあるよ。確かこの引き出しにミックスナッツがあったかな。」
さとしはさらに冷蔵庫から缶ビールと引き出しからミックスナッツの大袋を取り出した。
キースタンドに車の鍵をかけるとソファに座った陸斗が
「大人たちは良いね。ビールで乾杯ですか。俺たちにはないの?」
台所を指差して
「床下収納に、大きいペットボトルのコーラ入れてたよ。飲んだら?」
「はいはい。自分でですね。悠灯は?飲むの?」
「あ。既にここにあります。紅茶のペットボトル飲んでました。」
「了解。自分の分ってことね。」
まったりとカーペットやソファにくつろぎながら、十数年前にヒットした恋愛映画を家族みんなで鑑賞し始まった。
陸斗はそばにあったクッションを膝の上に乗せて、悠灯はソファを背もたれに、さとしと紗栄はソファのそれぞれ右側左側に腰掛けていた。
「…そういや、陸兄、昨日どうだったの?」
「え!? 何の話よ。」
「だって、今朝、つ…。」
言おうとした口を陸斗はふさいだ。
「あ、あ、あー。それね。そのことは、何とかなったよ。ツーリング行こうよって康範に誘われてたんだけど、断ったんだ。」
悠灯は紬のことが話したかった。
(苦しいんだけど!)
紬はモゴモゴ話す。陸斗は小声でその話はするなと念を押した。
「へー。康範くん、免許取ったの?乗るの車じゃなくバイクなの? 陸斗とそんなに乗りたかったんだね。一緒に行けばいいのに。」
「え!? だって、怖いじゃん。また事故ったら、まだ車の方が安全。」
「事故なんて、宝くじが当たるくらいの確率だって、いくら気をつけててもぶつかる時はぶつかるし。確かに車の方がね、守られてるし…。てか、陸斗、俺が用意してた冷蔵庫に入れてたもの紬ちゃんに渡してくれた??」
話を切り替えて言うさとし。
「あ、あーーー。それね、うん。渡したよ。すっごい喜んでた。」
「喜んでたなら、良かった。それ、行列ができる店で買ったんだよ。女子には人気らしくてね。」
「私たちにはないの?」
紗栄と悠灯はお互いに見つめあう。
「あ、今度買ってきますから。楽しみにしててください。」
さとしは冷や汗をかいた。
「それよりも紬さんって深月よりも大人っぽいよね。同じ年なんでしょう。」
「え、悠灯って紬ちゃんと会ったの?」
「あーだって…今朝見かけてさ。」
陸斗が両手を悠灯の前にぐちゃぐちゃに振って言わないようにしようとしたが、その行動が怪しかった。
「さっきから、陸斗何したの?悠灯の前でぐるぐると手を動かして…。」
「昨日泊まったんだって。紬さん。」
「あああああああ!なんで言うのよ。」
「言ったって減るものじゃないでしょう。どーせバレるって。部屋干しのバスタオル2枚もあるんだから。」
さとしと紗栄はふと部屋干しハンガーを見るとバスタオルが確かに干してある。陸斗は、乾燥機に入れてたことを思い出す。
「ごめんね、陸兄。私の服早く乾燥機で乾かしたかったから、そこに干し直したのー。」
紗栄とさとしは小声で話しだす。
「やっぱりそうなったじゃない。」
「別に俺は望んだことっていうか容認してるし。」
「大丈夫だったかな。」
「あんま、深く聞くなって。」
ソファでゴニョゴニョと夫婦してラブラブな様子だった。悠灯がそれを見てイラッとする。
「ねぇ、2人で仲良く何、話してるの?」
「ううん。なんでもない。」
「陸兄がどこまでやったか知りたいんでしょう。」
「そんなことないよ。別になぁ。」
「ええ、そうよ。」
「んで、どうなん?」
陸斗は、ベランダの方に体を向けて、両膝を抱いている。頭にはヘッドホンをつけて、音楽をききはじめていた。
「悠灯、あんまり問い詰めないで、陸斗が嫌がっているんだから。恥ずかしいんでしょう。分かってあげて。」
「…私の勘では、きっと黒だと思うな。紬さん、会った時、めっちゃお肌ツヤツヤしてたし。ね、お母さん、した後は、女子は綺麗になるんだもんね。」
その話をすると、ヘッドホンを聴きながら、陸斗の両耳はお猿さんのように真っ赤に染まり始めた。
リズムよく音楽に乗ってはいるけども,会話していることは丸聞こえだった。
「…うん、そっとしておこう。」
「確かにその説は否めないけどね。お赤飯だね。」
「そう言うのもお赤飯なの?ちらし寿司とかじゃなくて…。」
「分からない。おめでたいことだから?」
そんなこんなで、大越家では陸斗が大きな一歩を踏み出し、成長したんだと、お祝いした。
恥ずかしすぎる陸斗のことを考慮して、詳細はあえて聞かなかった。
実際にはお赤飯やちらし寿司は作らなかったが、ビールやコーラで乾杯をした。
ーーー
数日後、
紬はそれとなくオシャレをして、仙台駅中のステンドグラスの前で待っていた。
土曜日だということもあって、人の出入りは多く,待ち合わせしている人も多かった。
スマホの画面を見ながら、待っていた。陸斗とお泊まりをしたという日からしばらく経っているが、陸斗は安心しきった感じがあるようで前ほどこまめにラインのメッセージ交換はしてなかった。
何回もライン画面を,見ては寂しいなと思っていた。
その様子を少し遠くから覗く1人の男性がいた。
宮島洸だった。
脅すような形で今日は無理やりデートにこじつけた。陸斗にも言っていた通り、洸は紬を,狙っていた。チャンスを探していた。
一喜一憂している紬が微笑ましく思えた。
「おはよ。ごめんね、朝早くに呼び出して…朝苦手なの知ってるんだけど。」
「おはようございます。朝苦手なのはその通りですけど、今11時ですよ。この時間なら起きられます。」
洸は紬の頭にポンと手を置いた。
「まあまあ、怒らない。お腹すいたでしょう? どっか食べに行こう。」
ジャケットのポケットに手を入れて歩き出す。紬は小走りで着いていく。
「今日のこと、陸斗は知ってるの?」
「…最近、連絡取ってないので。受験のことで忙しいのかもしれないです。」
「え、うそ。言ってないの? 俺ら、陸斗に内緒の関係? 大丈夫、それで。」
かまをかける洸。
「え…そ、それは。」
「良いんだよね、別に。」
洸は強引に左手をつかんで、手を繋ぐ。
「オムハヤシで有名なお店があってさ、おごるから食べに行こう。あ、でも、ラグドールにもオムライスメニューあって飽きてるかもしんないけどさ。」
「……う~ん。」
複雑な表情のまま、なすがままについていく。
洸は鼻歌を歌いながら、ペデストリアンデッキを紬を引き連れて歩いていく。
街は人々がそれぞれに行き交っていた。