ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ディルは目を細める。ずっと冷え切っていた胸の奥が、温かくなった気がした。こんな気持ちにさせてくれるのは、この世界でたった一人――そう、目の前の少し変わった異世界からきたとびきり優しい聖女だけ。彼女の一挙一動が、愛おしくてたまらない。

(これが、幸せというものか……)

 産まれて初めての感情に戸惑いながらも、悪い気はしない。ディルは自分の頬が緩むのを感じた。そんなディルをエミが、一瞬驚いた顔をしたあと、うっとりした顔をする。

「もお~~、その笑顔、キュンです~~♡」
「きゅ、キュンです……? なんだそれは! またギャル語とかいう言語か?」

 ディルが質問した、次の瞬間――……

――ズガァー……ン!!!!

 突然、強烈な白光とともに、どこか遠くで爆発音が響き渡った。街のあちこちで、驚きと恐怖の悲鳴が上がる。

「――ッ! なんだ、今のは!」
 
 ディルはエミを庇いながら、慌てて周りを見渡した。遠く見える東の魔の森から、ギャアギャアと鳥たちが騒いでいる。

「は、ハクシャク、あれ……」

 怯えた顔をしたエミがあるものを指した。ディルはエミの指の先あたりに目を凝らす。

「な、なんだあれは……ッ!」
「黒っぽくて明らかヤバい奴がなんかいるよぉ!!」
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