ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ディルがきっぱりと断言する。ディルの決意は強固だ。エミが何を言っても、おそらく頑として首を縦に振らないだろう。
 ついに説得するのを諦めたのか、エミはしゅんと俯いた。そんなエミの頭を、ディルは優しく撫でる。

「おい、聖女よ。私を誰だと思っている? サンクトハノーシュ王国きっての稀代の天才、ディル・K・ソーオンだ。これくらいの問題、聖女の力を借りずとも何とかできる」
「自信のほどがマウンテン過ぎて、あたしの彼ぴマジイケメてる~。あっでもでも、別にハクシャクの能力がどーとか言いたいわけじゃないもん。あたしとしては、やっぱり心配になるわけでぇ……」
「心配……。そうか、お前は心配してくれているのか。なんだ、この胸にあふれる感情は……? なんだかこう、ふわふわするな」
「もー! 可愛いこと言ってごまかそうとしないでよぉ! あたし、マジで心配してるんだからねっ!」
「いや、誤魔化そうとしているわけではなく……」
 
 ツッコミ不在の馬鹿ップルの会話はとどまることを知らない。

 そうこうしているうちに、二人をのせた馬車はあっという間に屋敷についた。玄関には怯えた顔のメアリーとセバスチャンが待っている。
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