ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「や~~ん、マジで言ってる? 照れるぅ……」

 エミは恥ずかしそうに両手を頬にあてて、ベッドに寝転がった。メアリーは「もちろんですよ」と頷きながら、エミにブランケットをかけた。

「よっしゃ、なんかイケる気がしてきた。メアちんに悩みを聞いてもらってよかった! 神アドバイスありがと♡」
「それはようございました。さあ、そろそろお休みくださいませ」
「はぁい、おやすみンゴ!」
「はい、良い夢を」

 メアリーは折り目正しく頭を下げて、ランプの灯を消すと、にこやかに退出する。
 この時のメアリーは知るよしもない。このアドバイスが、エミの突拍子もない行動の引き金になってしまうことを。

◇◆

 夜もとっぷり更けたころ、ようやく転移魔法の準備が整った。

 転移魔法という高位魔法を使うとなると、複数人の魔導士の魔力が必要となる上、魔法陣の作成にも時間がかかる。

 ディルは転移魔法の準備が完了するまでの間、猛烈な勢いで領地の仕事を片付け、片っ端からスケジュールを調整し、そして万が一のために遺言書を書いた。
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