ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「おい、セバスチャン。一つ思い出したのだが、聖女のために数日後に旅商人が来ることになっている。聖女が気に入ったものは、必ず全て買ってやれ」
「気に入ったもの全てですか!? お言葉ですが、女性の身の回りの品というものはとんでもなく高いものでして……」
「おい、聖女は未来の伯爵夫人だぞ。ここで金を惜しんでどうする」

 ディルはギロリとセバスチャンを睨んだ。気弱なセバスチャンが小さく悲鳴をあげてしどろもどろになっていると、魔導士の一人が、ディルに「いつでも転移魔法は発動可能です」と厳かに告げた。

「それでは、参る」

 ディルは小さな荷物とともに魔法陣の中央へ発つと、片手をあげた。魔導士たちの詠唱が始まる。

(ドラゴンの推定飛行速度と、ガシュバイフェンから首都までの直線距離を計算したが、私の方がドラゴンより早く首都に到着する計算になる。しかし、首都は大丈夫だろうか。騎士たちがドラゴンを見て戦意喪失しないといいが……)

 ディルは嘆息した。考えることが山ほどある。足元の魔法陣がぼんやりと光り始めた。もう後戻りはできない。
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