ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
ディルは急にエリックとエミの間に割って入った。口調こそ丁寧だが、ほぼ命令だ。エリックは、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする。第一王子という特殊な立場上、エリックは誰かに命令されることがほとんどないのだ。
「なっ、な、なななな、なんだお前は……」
「レディに断りなく触れるとは、不作法極まりない行い。看過できませんな。聖女エミは私の婚約者だ。そのような愚かな振る舞いは控えていただきたい」
エリックはディルの地を這うような低い声に心底震え上がった。その上、エリックより頭一つ分背の高いディルは、威圧感のある無表情でエリックを見下ろしている。それがまた、怖い。
しかし、エリックにもプライドがある。彼はなけなしの勇気をかき集め、甲高い声でディルに向かって吠えた。
「……うるさい! 父上のお気に入りだからと言って生意気だぞ! それに、エミと俺は婚約していた仲なんだ。これくらい、許されるに決まっている!」
「今は婚約されておられませんよね? 元婚約者は、いわば他人同士。他人が婚約者に非礼な振る舞いをすれば、現婚約者の私が咎めるのは、しごく真っ当だと思いますが」
「……ッ!」
「なっ、な、なななな、なんだお前は……」
「レディに断りなく触れるとは、不作法極まりない行い。看過できませんな。聖女エミは私の婚約者だ。そのような愚かな振る舞いは控えていただきたい」
エリックはディルの地を這うような低い声に心底震え上がった。その上、エリックより頭一つ分背の高いディルは、威圧感のある無表情でエリックを見下ろしている。それがまた、怖い。
しかし、エリックにもプライドがある。彼はなけなしの勇気をかき集め、甲高い声でディルに向かって吠えた。
「……うるさい! 父上のお気に入りだからと言って生意気だぞ! それに、エミと俺は婚約していた仲なんだ。これくらい、許されるに決まっている!」
「今は婚約されておられませんよね? 元婚約者は、いわば他人同士。他人が婚約者に非礼な振る舞いをすれば、現婚約者の私が咎めるのは、しごく真っ当だと思いますが」
「……ッ!」