ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 エミはびっくりした顔をしてディルを見上げる。

「え、ええっと……?」
「ここにこれ以上いる必要はない。ガシュバイフェンへ帰るぞ」
「でも、ハクシャクはここにいたほうが、良いんじゃ……」
「そうかもしれないな。しかし、これ以上ここにいると、首都の滞在期間が長くなる。それだけはごめんだ。国王に見つかる前に可及的速やかに去るぞ」

 ディルはあっさり答え、さらに歩みを速めた。

 城の長い廊下にさしかかったころ、後から追ってきたエリックが呼び止める。
 
「おい、待て! 止まれよ、止まれったら! 勝手に帰るなんて許さないからな! 今回の件の処罰が決まるまで、お前たちは監獄にとじこめ、へぶっ」

 急に立ち止まったディルの広い背中に、エリックは激突して派手に尻もちをついた。ベタン、と情けない音が廊下に響く。
 ディルはため息をついて振り返り、エミを守るように仁王立ちすると、大理石の床にへたりこむ第一王子を睥睨した。

「ドラゴンの討伐は成功したはず。そんな我々を、どんな罪で監獄にいれるのいうのです?」
「……そ、それは」
< 154 / 392 >

この作品をシェア

pagetop