ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「不当な理由で投獄することは、例え王族でも許されないはず。もう一度聞きますが、どういった罪で、我々を監獄にいれると?」

 ディルの強い瞳がエリックを射抜く。凍てつくような、冷たい視線。

「これ以上、私の婚約者を侮辱することは許さない」

 いつもは表情の読めない顔をしているディルだが、エリックを睨みつける彼の目には静かな憤怒が揺らめいていた。エリックは情けなく口をパクパクさせる。
 ディルは踵を返すと、今度こそエミを連れだって去っていく。やがて転移魔法の詠唱が白亜の城に響き渡り、ガシュバイフェンの領主ディル・K・ソーオンと、聖女エミは来たときと同じくらい唐突に首都を去っていった。

 エリックは悪態をつきながら床を叩く。

「こ、こんなの、俺は想定してないぞ……っ」

 彼が元婚約者の聖女エミをディル・K・ソーオンに押し付けたのは、ただの思い付きだった。
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