ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 首都から遠い領地に彼女を追いやれるのであれば、元婚約者を押し付ける相手なんて誰でも良かったのだ。最近立て続けに婚約破棄された男、という噂を聞いて、エリックはあえてディルを選んだ。「冷血伯爵」などというあだ名も良かった。冷血などと称される男が、聖女を大事にするわけがないのだから。

 そう、聖女エミがエリックとの婚約破棄を後悔するような酷い男であればあるほど、エリックにとって都合が良かった。

「あの生意気な聖女が俺に『もう一度婚約してください』と泣きながらすがってくれば、妾にでもしてやる予定だったのに、クソ、ディル・K・ソーオンめっ! 絶対に、絶対に俺を敵に回したこと、後悔させてやるんだからなっ……」

 誰もいない白亜の城の廊下で、エリックはディルに一泡吹かせてやろうと強く心に決めたのだった。 
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