ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―

聖女、泣く!

 早朝、ガシュバイフェンの屋敷に衝撃が走った。しばらく帰ってこないと言ったはずの屋敷の主人とその婚約者が首都からあまりに早い帰還を遂げたからだ。
 完全に寝ていたセバスチャンは慌てて起き出し、ほとんど寝間着姿で彼の主のもとへ向かった。

「主様、それにエミ様! ずいぶんお早いご帰還でしたね!? ドラゴンの件はもうよろしいのですか? 次はいつ首都へ……」
「いや、もうしばらく首都には戻らぬ」
「へっ、ドラゴンは……?」
「討伐した」
「討伐した? こんなにも早くですか? さすがにジョークだとしてもあまり笑えないジョークのように思えるのですが、もしかして明日この国が滅ぶとかでは……」
「こんな状況で冗談を言うと思うか? とにかく、私と聖女は寝る。しばらく起こすな」

 セバスチャンは狐につままれたような顔をして、助けを求めるようにエミに視線を投げかけた。しかし、いつも騒がしいエミは、さきほどから一言もしゃべらず、憔悴した顔でずっと黙っている。いつもと違う様子に、たまたま居あわせたメイドたちも心配そうだ。
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