ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「待って待って、そんな顔しないで! そんなんじゃないんだって! でもさ、あんなバケモノみたいな力を見たら、誰だってドン引きしてあたしのこと嫌いになっちゃうよ。だって、伝説のドラゴンをワンパンで倒すとか、あたしが言うのもアレだけど、かなりヤバめってゆーか……」

 だんだん自信がなくなってきたのか、エミの言葉尻がどんどんすぼんでいく。

 しょんぼりと俯くエミを前に、ディルの胸がずきりと痛んだ。これほどまでに自分自身の力を恐れ、思い詰めてもなお、彼女はあえて自らの力でドラゴンを倒す決意をしたのだ。その決断が彼女にとって、どれほどに勇気がいる行為だっただろう。嫌われるかもしれないという葛藤を抱きながらも、聖女エミは多数の人命を優先した。

 眉をハの字にして黙り込んだエミの肩を、ディルはポンポンと叩く。

「なあ、聖女よ。私が思うに、お前は自分に自信がなさすぎる」

 不安に揺れるエミの瞳を、ディルはじっと見つめる。

「あれほどの力を持っているのなら、堂々とすれば良いではないか。自らの力を誇りに思え」
「誇りに思っていいの……?」
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