ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 その声はあまりに優しく健気で、――彼の胸に押し寄せた愛しさは、張り詰めた意識を緩めるには十分だった。

「ぐっ……」

 ディルは熱い吐息を漏らすとそのままエミの奥に自らの熱を放つ。
 強い快感が入り混じった荒い息を吐くディルを、頬を染めてエミはぼうっと見つめた。身体の奥が、熱い何かで満たされるのを感じる。

(……これで、終わったってことで良いんだよね……?)

 快感に変わる前の痛みの残滓に顔をしかめつつ、エミはほっと溜息をつく。男性は一度絶頂すれば性交は終わるものだと耳年増なサクラから聞いたことがある。
 ディルがなかなか動かないのを不審に思ってか、エミは恐る恐るディルの銀髪に触れた。

「ええっと、ハクシャク…? これで終わり、だよね? ちょっとあたし、シャワーあびたいかなーとか……」
「……足りない」
「えっ」
「これだけで足りるものか」

 確かに、彼女の中のソレは、未だに硬度を保っている。彼は再び緩々と腰を動かし始めた。さきほどとは質の違う快感がエミを襲う。

「な、なにこれぇ!?」
「さあ、なんだろうな」

 先ほどまでとうってかわって、ディルの表情にはどこか余裕がある。彼はぺろりと唇を舐めた。まるで、とっておきの餌を目の前にしている肉食獣のように。その仕草は、大人の色香が滲んでいる。
 エミは驚きのあまり目を白黒させた。

「……ええっ、ちょっと、こんなの聞いてないんですけどぉ~~!……はぁんっ♡」

 エミの悲鳴は、やがて甘えるような嬌声に変わった。
 どうやら、夜はもう少し続くらしいと、エミは押し寄せる快感のなか、遅れて気が付いた。
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