ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 それほどの魔法を見せつけられれば、相手も戦意喪失するに決まっている。ハド共和国はとんでもない相手を敵に回してしまったようだ。

 そういえば、先の戦いについては一切関知しないと決めていたディルも、一つだけ気になっていた点がある。隣国との戦争にしては、戦死者が異常に少なかったのだ。
 後学のためにとその理由を聞けば、「第一王子の手柄だ」「優れた騎士たちがハド王国と勇敢に戦った」だの人々は答えたものだが、実のところエミの強すぎる魔力が大いに関係していたようだ。戦うことなく勝利すれば、当然のことながら戦死者は減るのだから。
 ディルはなかば呆れ顔で頷いた。

「お前は、先の戦争の話をまったくしなかった。きっと悲惨な状況を見て心の傷を負ったのだろうと勝手に思って黙っていたが……」
「黙ってたのは、あたしの激ヤバ魔法のことを聞いたら、ハクシャクがあたしのこと嫌いになるかもって勝手に怖がってたからだよ。でも、ぜーんぜん隠す必要もなかったよね~♡ あたし、勝手に怯えたり泣いたり、ホント馬鹿だったなぁ」
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