ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 エミは大げさなまでに手をブンブンと振る。旅商人はひどくリアクションに困った顔をした。
 後ろにいたセバスチャンがおずおずと助け船を出す。
 
「エミ様、それはともかく、何か他にほしいものはありませんか? ディル様がせっかくなんでも買い与えると言っておられますのに、さすがに羽ペン一つだけでは……」

 旅商人が世界中から様々な高級品をかき集めたのにもかかわらず、エミがほしいと言って選んだのは、小さなピンク色の羽ペンのみ。しかも、「可愛いからこれサクぴに送りたいな~」とあっけらかんと言い放ち、商人は唖然とした。もはやディルからの贈り物の(てい)をなしていない。

 旅商人はバタバタと箱を押しのけ、きらびやかなドレスを引っ張り出してきた。

「ほら、こちらなんていかがでしょう? とっておきのお品です! このドレスは今の王宮の流行りでして、こちらを着れば流行の最先端間違いなし! 社交界の華になることでしょう!」
「ああっ、そのドレスならエミ様の今の瞳の色によく似合われますよ! まあ、エミ様の目の色は『からこん』とやらでしょっちゅう変わりますが」
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