ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 セバスチャンと旅商人がちらっとエミを見やると、当の本人はカラコンでヘーゼルグレーに着色されたくりくりの目を瞬きして、ちょっと困ったような顔をした。

「ああー、歩きにくい系の服はちょっと……。掃除する時ときひっかかるじゃん? 足元見えないし」
「伯爵家の奥方様が、掃除!?」
「キャーッ! だからまだあたしは奥方様じゃないってぇええ♡♡」

 照れるエミが再び手をブンブンと振る。これでは堂々巡りだ。
 旅商人とエミのやりとりを見ていたディルが、ついにため息をついて立ち上がった。

「もういい。聖女は物欲がなさすぎるようだ。代わりに私が選ばせてもらう。そうだな……。まず、それと、これと……」
「は、伯爵様ぁ! ありがとうございます!」

 旅商人は拝むような勢いでディルに頭を下げる。せっかく大量に仕入れたものが、かたっぱしから在庫になるような状況は回避できたのだ。彼にとってディルは救世主である。
 ディルはさらにいくつかのドレスや宝飾の類を選ぶ。どれも最高級品ばかりだ。エミは慌てた顔をした。

「そ、そんなにいらないよぉ! 特にそのアクセサリーとか、見るからに高そうだもん!」
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