ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「……むっ、そういうものなのか」
「そういうものなのです! プロポーズというものは、殿方が選んだ月給の2.5ケ月分の婚約指輪を小さい箱からパカっと取り出してやるものなのですぞ! しかも、ドキドキするようなシチュエーションでふたりきりのときに行い、計画の全ては秘密裏――つまり、サプライズで遂行せねばなりません!」

 セバスチャンの価値観は古の聖女が持ち込んだらしい絶望的に古い伝統的な作法であったが、悲しいことにディルの婚約に対する知識はつゆほどもない。――というわけで、愚かにもディルはセバスチャンの言うことを鵜呑みにした。

「ドキドキするような……、か。わかった。かなり高難易度だが、必ずや成し遂げよう」

 ディルが大真面目に答え、セバスチャンはホッとした顔をする。二人は無言でうなずき合うと、再び部屋に戻った。
 すでに旅商人は荷物をまとめており、部屋に入ってきたセバスチャンに請求書を渡す。商人から渡された請求書を見て、セバスチャンは涙した。

「まことに清貧な……。女性の買い物でこれほど少額なのも珍しいことにございます。これで伯爵家の資金繰りも安泰というもの。これぞ真の聖女様……」
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