ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「ふぅん……。じゃ、とりま飲んでみよー!」

 エミが瓶のふたを開けた。キュポン、という小気味いい音とともに、嗅ぐだけでくらくらするほどの、官能的な香りが部屋いっぱいに広がる。
 ディルは慌てた。

「なんでそうなる! やめろ!」
「え~~、だってせっかく商人さんがあたしたちのために選んでくれたんだよ? 使わなかったって知ったら、商人さんが悲しむと思うんだぁ」
「お前は相変わらず、人がいいにもほどがある!」

 ディルは慌てて小瓶をエミの手から奪おうとしたものの、エミはするりとその手をよける。そして、瓶に口につけ、一気に小瓶の中身をあおった。エミの白い喉がコクリと小さく上下する。

「飲んだのか!?」
「飲んだよ~♡ なんか、甘ったるいのにほのかにエグい……? それでいて舌が痺れるような辛さがあるような……」
「味の解説はいらん! そんなことより、毒でも入っていたらどうするんだ! 粗悪なものは身体に悪影響を及ぼすと聞くぞ!」
「え~~、大丈夫だってぇ……。あの商人さん、良い人ポイント超高めだよ? だってあのピンクの羽ペンは直でサクぴに送ってくれるって……、ふぁ……、んぁっ!?」
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