ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 しかし、一般的にガシュバイフェンに出没するモンスターは割と強い。モンスターを討伐するのは、訓練を受けた騎士や聖職者くらいで、モンスターの駆除を生業にする人々もいるほどだ。しかも、一般的にモンスターを倒すには複数人でパーティーを組むもの。
 いくら腕に自信があっても、うら若き乙女一人でモンスターと対峙するのは危険すぎる。
 セバスチャン困った顔をした。

「いいですか、聖女様。モンスターどもを侮ってはなりません。ヤツらを倒すには、それなりの対策を……」
「フン、黙って聞いていれば、なんとも哀れな聖女が来たものだ」

 セバスチャンの言葉を遮って、それまで腕を組んで黙っていたディルがようやく口を開いた。

「護衛を付けられることもなく、早すぎる時間にここに到着するのも、到着して聖女一人ガシュバイフェンをさまようことになるのも、あの第一王子はちゃんと分かっていたはずだ。おおかた、わざと転移時間を間違えてこちらに知らせてきたのだろう」

 それは冷たく、残酷な一言だった。明るく笑っていたエミの顔がにわかに凍り付く。
 セバスチャンはひどく気まずい顔をした。

「主様は、なぜ人があえて言及を避けたことをおっしゃるのですか……」
< 21 / 392 >

この作品をシェア

pagetop