ギャルは聖女で世界を救う！ ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです！―

伯爵、準備する！

　国王からの突然の勅命がきてから、ガシュバイフェンのソーオン伯の屋敷は、いつになく慌ただしかった。

「ええっと、必要なものは揃ってるよね？　なんか、旅行の前って出発する時に忘れ物してないか不安になるタイプなんだよねぇ、あたしって……」
「エミ様！　こちらをお忘れですよ！」

　いつもの自室で、メイドたちと荷物の最終確認するエミの肩に、走り寄ってきたメイド長のメアリーがぶ厚いストールをぐるぐると巻き付ける。

「えー、メアちんってば、コレはさすがに暑すぎっしょー！」
「これから冬なんですから、ストールくらいは持っていってくださいまし！」
「大丈夫だってぇ！　マジ心配性なんだからぁ」

　周りにいたメイドたちも、陽気に笑いながら頷いた。

「そうですよ。首都はガシュバイフェンみたいに雪が積もったりしないらしいですし」
「冬に雪が降らないって、ガシュバイフェン生まれ育った私たちからしてみれば、全然想像つかないよねえ」
「あーん、いいなぁエミ様は！　冬の間は首都にいられるだなんて！」