ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「……ホントはいろいろ話したいことあったけど、さすがに疲れてるっぽいし、また今度だね」

 エミは頬杖をついて、眠っているディルにぽつりとつぶやく。
 いろいろ話を聞いてほしいことがあった。サクラとのショッピングや、宮廷で食べたサクラ考案の牛丼もどき、これから魔法のレッスンを受けること――そして、エリックが言っていたディルが夜な夜な出かけている理由も。
 エリックの話を思い出して、エミは一人顔をしかめた。
 エリックの言うとおり、ディルは首都にいる馴染みの女のところに顔を出しているのだろうか。それとも、夜な夜な花街にでかけ、両手に夜の蝶たちを侍らして――…

「やーん、知りたくなかったよぉ! 本当は、会いに来てくれるだけでも、うれしいはずなのに、なんかめっちゃモヤモヤする……。いや、別に男の人だから仕方ないのかもだけど、だけどイヤなんだもん!」

 エミはぐるぐると悩む。心の中のモヤモヤは「独占欲」という名前の感情だとエミが知るのは、残念ながらずっとあとのことだ。
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