ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 今日のエミは、渋谷にいそうなギャルではなく、サンクトハノーシュ王国によくいるような、楚々とした貴族令嬢然としている。
 それが功を奏したのか、今日のエミはパーティー会場を一歩進むたびに貴族のご令息たちに話しかけられるような状態だった。話しかけてくるご令息たちはみな、エミに好意的で人当たりも申し分ないのだが、いかんせん数が多すぎる。

「話しかけてもらえるのは嬉しいけどさぁ、やっぱ限度があるってゆーか……」
「エミたそ、どうしたの?」

 エミの独り言に、凜とした声が割りこんでくる。エミが振り向くと、心配そうな顔をしたサクラが立っていた。どうやら、エミを心配して駆けつけたらしい。

「サクぴってば、パーティーの主役が抜けちゃっていいの?」
「これくらい平気よ。パーティーで人脈作ることも大事だけど、私にとってはエミたそのほうがもっと大事なの。それより、大丈夫? 体調悪い?」
「ちょっと疲れちゃったから、チルってただけだよぉ♡」
「あー、今日のエミたそは注目の的だもんね」

 いつもと違う装いのエミを、サクラはうっとりと見つめた。エミは笑いながら首を振る。
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