ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
「アッちゃんマジで大丈夫そう? イヤだったらちゃんと言いなー? 頼りないだろうけど、あたしが味方になってもいいし」

 ぽんぽん、と温かい手に肩を叩かれて、アレキセーヌはふいに泣きたくなった。凍てついた心が、少しずつほどけていく。

「……っもう、最初から最後まで、わたくしはエミ様には敵いませんわねぇ」

 ややあって、アレキセーヌは諦めたように微笑んだ。

「わたくしの完敗です。気分が悪くなったということにして、わたくしはこれで退散してさしあげますわ」

 アレキセーヌはパチンと手を叩いて、くるりと踵を返す。その顔は、先ほどまでと打って変わって、どこか吹っ切れたような顔だった。その足取りは、自信に満ちあふれている。

 アレキセーヌは、去り際ににくるりとサクラのほうを振り向く。

「サクラ様、一言だけいいかしら。()()()()は、今日決行の予定ですわ。わたくしはただの時間稼ぎで来ただけです」
「……なんですって!?」
「信じるか信じないかはお任せいたしますけれど、お急ぎになったほうが良いのではなくて?」

 アレキセーヌは口角をきゅっと上げて微笑み、片目をつぶる。それは意外なほどにチャーミングなウィンクだった。
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