ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 部屋にひとり残されたエミは、ため息をつく。

「や~ん、じっとしてろって言われても気になっちゃう! 大丈夫なのかなぁ。でも、サクぴがああ言うなら、おとなしくしてるのがいいよねえ。サクぴの顔、けっこうマジだったし」
 
 いまのエミにできることは、せいぜい緊急事態とやらに備える程度だ。
 仕方なくエミはパーティー用のドレスを脱ぐと、いつものシスター服に着替えた。すくなくとも、ドレスよりは走りやすいだろう。

「はぁ、やっぱこれが落ち着くわ。ミニスカしか勝た~ん! せっかくだし、髪型もいつものツインテにして、メイクもしよーっと」

 ――こうして、一時間経った頃にはサクラのメイドたちが苦労して作りあげた清楚な聖女エミは見る影もなく、盛りに盛った付けまつげがチャームポイントのギャルのエミに逆戻りした。
 大きな姿見を前にくるりと一回転して、エミは満足そうに微笑む。

「や~ん、めっちゃバイブスあがるわぁ♡ やっぱりあたしはこうじゃなきゃ!」

 そう言いながら、エミは満足げに窓際に置かれたソファに腰掛けてうーんと伸びをする。大きな窓からは城の庭が一望できるため、エミはなんとなくそちらに目を向ける。
< 280 / 392 >

この作品をシェア

pagetop