ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 脳裏にエリックの一言が浮かんで、エミはモヤモヤした気持ちになった。
 エリックが夜中に部屋に来た時から、再びディルはエミの部屋を訪れていない。理由はわからないままだ。

「本当はこの前ハクシャクにいろいろ聞こうと思ったけど、聞きそびれちゃったからなぁ。だって、あたし以外の女の子に会ってるって言われたら、絶対ぎゃんぎゃん泣いちゃうもん……。でも、気になるよぉ……」

 ぶつぶつ言いながら、エミはしばらくぐるぐると部屋の中を歩き回る。
 エリックの一言を真に受けているわけではないものの、それが嘘かどうかの確証もない。
 いま部屋を出て全力で走れば、エミはディルに追いつくだろう。しかし、それをするとサクラとの約束を破ることになる。とはいえ、これを逃せば、せっかく真相を解明するチャンスがなくなってしまうわけで――。

「うわーっ、やっぱり一生ハクシャクを疑う人生なんて無理ぽすぎるんだわー! サクぴ、ごめんっ! これは緊急事態ってことで!」

 意を決してマントを羽織ったエミは、弾丸のごとく曇り模様の城下町へ飛びだした。
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